「みなたび」は、町全体を販売する総合窓口

2017年には観光客入込数が140万人を突破するなど観光によるまちづくりをすすめる宮城県南三陸町。その中核を担う一般社団法人南三陸町観光協会では、2016年から着地型旅行商品の予約・販売サイト「みなたび」のサービスを開始し、独自性高い観光コンテンツを提供しています。サービスの立ち上げに関わった観光協会及川和人事務局長に話を伺いました。

外からの誘客で地域産業を支えたい

一般社団法人南三陸町観光協会(以下、観光協会)が2016年からサービスを開始した宿泊やアクティビティなどの旅行商品の予約・販売サイト「みなたび」。観光協会が独自の宿泊・体験予約システムの開発構想が生まれたのは2015年のことでした。及川吉則観光協会長と及川和人事務局長が中心となって企画をしていました。

当時、南三陸町(宮城県)は、壊滅的な被害を受けた2011年の東日本大震災から4年余り。緊急期の復旧フェーズから、復興そしてまちづくりへと向かう岐路にあるタイミングでした。

「震災以降、いわゆる”震災特需”と言われるような状態が続いていました。震災被害を免れた町内の宿泊施設や、再建した宿泊施設、新たにオープンした宿泊施設も、ボランティアや復興工事に携わる人で占められていました。しかし、いつまでもその”震災特需”が続くわけではない、と感じていた時期でもありました」と及川和人さんは振り返ります。

「町の人口が減少していくなか、地域の産業を支えていくのは外からの誘客しかない、と考えていました。そうなった際に観光協会がハブとなって、『宿泊施設も、体験プログラムも、地域産品も、南三陸町全体を販売する総合窓口』を作っていきたい、という構想が生まれました。それが現在に続く『みなたび』のコンセプトとなり、スタートでした。そうすることで、予約に伴う手数料等も大手サイトを使って外に流出させることなく地域で循環させることでき、さらに予約管理などをシステムで一元管理することによって、限られた人員で多岐にわたる業務を行う観光協会の効率化を図るという狙いもありました」

「みなたび」は大手予約サイト同様、複数の事業者の検索・予約が可能

観光まちづくりの長年の成果を活かす

東日本大震災以前から「地域づくり観光」を推進してきた南三陸町。平成21年には、「観光による地域づくり」のよりいっそうの推進を目指して、南三陸町観光協会を法人化し、第3種旅行業に登録。観光による地域づくりを実践してきました。

東日本大震災後も、震災以前から行っていた体験プログラムも含め、地域の担い手がそれぞれのボランティアをターゲットにした体験プログラムなどを独自に開発・実施していました。

「宿泊施設も、体験プログラムも、それぞれにつながりを持ってファンがいる状態でした。そこに震災で生まれたつながりを町としてどのように生かすか?ということを課題としてもっていました」と及川さんは話します。

「現在月間10万ユーザーからアクセスのある観光協会のウェブサイトではアクセス数上位3位には常に宿泊施設ページを占めていました。なので、独自の予約サイトを構築するにあたっては、観光協会のホームページからある程度の流入を見込め、そのお客さんの予約を取り込んでいくことでサイト運営を行なっていけるのではないか、と想定していました」

南三陸町観光協会HPのトップページ

しかし、2016年のサービスローンチ後、売り上げは想定の1/10程度と壁にぶつかることになりました。その原因は、サービスに参画する事業所が少なかったこと。

「開発をすすめながら、町内の宿泊施設に参画を呼びかけていました。しかしやりたいという希望はあっても、ITに疎く、インターネット上での予約管理というだけで拒否反応を起こしてしまい、難しいという事業所が多くありました」

この課題を解決する特効薬はなく、観光協会担当者による事業者との粘り強い対話から一社ずつ参画事業所を増やしていきました。また、事業者からのニーズ、課題に対して、細かいサービスを改善していくことで不安を取り除いていくことを意識したと及川さんは話します。

「例えば、予約と宿のFAXとの連動システムや、スマートフォンアプリのlineとの連動など、実際に利用する事業所の声から加えていった機能が多くあります。小さな改善を重ねていくうちに、参画する事業者も増え、2017年頃から利用の数字もあがってきました」

実際に利用する事業者の声を受けアップデート

関係人口構築へのステップに

みなたびと大手宿泊予約サイトとの大きな違いは、宿泊だけではなく体験コンテンツの予約もできる点にあります。

「大手サイトでは宿泊場所を予約して終わりになってしまうけれど、みなたびは宿泊施設を予約すると、その滞在中に体験できるプログラムなどを探していくことができます。

宿泊施設という『点』で来る予定だった旅行者が、南三陸で立ち寄る『点』が増えていくことで、滞在時間の延長にもつながります。大手サイトにはない、みなたび限定の体験プログラム付き宿泊プランなどもあり、人気を得ています。

さらに、今年の6月から『みなたび』の姉妹サイトとして地域産品の物販サイト(「みなみな屋eマルシェ」)も立ち上げました。みなたびで獲得したポイントは物販サイトでも使用できるので、宿泊や体験プログラムで獲得したポイントを、物品購入で使用できます。南三陸を訪れてくれて、ファンになっていただいた方が、すぐに再訪することは難しくても、遠方にいても『買う』ことで継続的な関係をつくっていけることが期待されます」

 

一度きり、消費型の「観光」ではなく、地域との関係性を深め、地域のファンへとつながり「関係人口」の構築へとつながるステップを「みなたび」は提供しているのかもしれません。

2019年6月にオープンした物販サイト。みなたびで貯めたポイントを使用可能

(キャプション)2019年6月にオープンした物販サイト。みなたびで貯めたポイントを使用可能

魅力あるコンテンツの一元管理に効果的

もともと、宿泊施設も体験プログラムも、多くの事業者がコンテンツをもっていた南三陸町。IT化へのハードルはありましたが、それを地道に乗り越えれば、魅力ある予約サイトを提供することは難しくありませんでした。そして震災以前からの観光への取り組みや、震災後のボランティア等を通じて、多く存在していた南三陸町のファンという潜在顧客もありました。その方々に南三陸町の観光の窓口として機能を発揮しています。

「すでにコンテンツがある地域で、アナログで管理していたり、それぞれバラバラに管理されている状況を、デジタルに移行して一元化したい、という地域であればこのシステムを生かすことができるのではないか、と思います。地域予約サイトの立ち上げによって、爆発的に新規顧客の獲得につながるかというとそういうわけではない。あくまで地域の観光コンテンツの”ハブ”として、観光による地域づくりの入り口を担うという感覚が大切かと思います」

2019/06 Edit/Photo by Takuya Asano