地域OTA成功事例/南三陸町/コロナ禍での事業者支援

ちいプラ(地域旅行商品販売プラットフォーム)は、地域OTA(地域型OTA、地域版OTA、観光DX)を実現するためのワンストップソリューションです。オンラインでの宿泊予約とアクティビティ予約とその管理に必要な機能を網羅しています。地域の情報発信、予約、決済、データ利活用まで一気通貫にサポートします。

ちいプラを活用した地域OTAにより町づくりに取り組んでいる先進自治体をご紹介いたします。今回は、宮城県の南三陸町です。

南三陸町の地域OTA「みなたび」

南三陸町では、2016年3月から地域OTAに取り組んでいます。サイトの名称は「みなたび」です。運営者は南三陸町観光協会です。先進的な取り組むを行う組織が直面する課題として「参考にできる先行事例や勝ちパターンがない」ことがあげられます。さらに新しい取り組みには懐疑的な声や様子見する人もつきものです。南三陸町観光協会も例外ではありませんでしたが、地道に試行錯誤・改善を重ねて、今では(特に個人向けの)地域観光に欠かせないツールとして定着しました。

その効果は、以降で紹介するとおりコロナ禍でもいかんなく発揮されました。

ちいプラを活用して南三陸町観光協会が運営するオンライン予約サイト「みなたび」のトップ画面

コロナ禍の地域OTA/未来の交流券による事業者支援

2020年、世界が新型コロナウイルス感染症に襲われました。漁業と並び観光業を主力として位置づける南三陸町への影響は甚大でした。先の見通せない苦境に直面する観光事業者のために町が支援予算を計上しました。支援の実務を担ったのが南三陸町観光協会です。南三陸観光協会では、この予算を原資として利用者にお得な「未来の交流券」を設計しました。この事業が実施された時期は、旅行やイベント、人的交流が制限され、旅行を控えるような事態となっており、いつまで続くのか全く見通せなかったので「将来の利用券を販売」する形となったのです。

南三陸町観光協会では、宿泊予約、アクティビティ予約に加えて、弊社が提供するネット物販サイト「みなみな屋eマルシェ(以降、みなみな屋)」も運営しており、未来の交流券は、みなみな屋で販売されることになりました。交流券は、瞬く間に売り切れて、その売上は事業者に届けられて、事業存続を下支えしました。

南三陸町観光協会は支援事業を実施して期待に応えましたが、その一方で大きな課題も顕在化しました。

南三陸町観光協会に膨大な事務手続き、問い合わせ対応が発生したのです。未来の交流券は、電話・FAXでも購入を受付けたので、ネットを利用できない方々からの申込み対応に追われました。このようなお客様にはオンラインチケットは活用できないので「紙」の交流券の郵送が必要となりその作業に忙殺されました。販売完了後も「利用期限」や「違う宿に泊まりたい」といった問い合わせや要望の電話が殺到しました。この苦い経験は次の機会に活かされることになります。

南三陸宿泊キャンペーンの実施

2022年もコロナ禍の影響は続いていました。ここで国のコロナ対策費を原資とする3,300万円の町の補助金が観光業支援に投入されることになりました。

2022年の観光業支援事業も南三陸町観光協会が実施主体となり、事業のスキームが検討されました。このときに「未来の交流券」での学びが活かされたのは言うまでもありません。コロナ禍でも人の往来、旅行、交流が日常になって、通常の宿泊予約も可能なフェーズに入っている中で、運営主体の実務負担も少ない方式を構築しました。

検討の結果、地域OTAサイト「みなたび」で「南三陸宿泊キャンペーン」を開催することになりました。これはGotoトラベルや全国旅行支援に似た仕組みで一泊最大5,000円を割引するキャンペーンです。

大きな反響

反響は大きく、キャンペーンが適用された宿泊プランに2,200件、8,800万円(実際の宿泊ベース)の利用がありました。旅行者が現地で利用した飲食や土産物購入代金を含めるとさらに大きな金額が地域で消費されたことになります。控え目に見積もっても3,300万円の原資に対して1億円以上の経済波及効果が創出されたのです。(その他、新規顧客データ、多数の好意的な口コミ投稿など無形資産の蓄積もありました)

もしも地域OTA「みなたび」が存在しなかったら?

もしも地域OTA「みなたび」が存在しなかった場合、どうなっていたでしょうか?仮に3,300万円を直接、宿泊施設に補助した場合、このような経済波及効果はなく、飲食や土産物店への恩恵もありませんでした。無形資産である顧客データや好意的な口コミが地域に蓄積されることもありませんでした。

南三陸町に、地域OTAの実践である「みなたび」とその運用に長けた「南三陸町観光協会」が存在することで実現できたのです。

さらに運営元となる南三陸町観光協会には、予約成約に対する通常の手数料収入もありました。これによって地域全体のブランド価値をあげる取り組みとそれを担う優秀な人材の維持に持続性がもたらされます。このような好循環が地域OTAによって実現されているのです。

証明された大手OTAと遜色ない集客力

南三陸宿泊キャンペーンでは「地域OTAの集客力は大手OTAと遜色がない」ことも実証されました。キャンペーンは好評だったため、予算の消化も早く、当初設定された期間より早く前倒しで終了しました。

参考/南三陸宿泊キャンペーン実施のためのちいプラ利用料金は?

南三陸宿泊キャンペーンを実施するにあたって、南三陸町観光協会からちいプラへの追加費用はゼロです。キャンペーン初期のアクセス急増に対応するための一時的なサーバ性能増強やキャンペーン期間中の通信データ量増により累計で約1万円のインフラ費用増のみです。

※南三陸町観光協会様とは、成約手数料もゼロの契約ですので、収益のすべてが地域で循環します。

地域OTAの成功要件は?

「南三陸宿泊キャンペーン」の事例から、地域OTAを成功させるための重要な要件が見えてきます。例えば以下のような点です

  • 自治体(の首長や行政職員)が、地域OTAを運営する組織・スタッフと同じ目的、同じゴールを共有しており、その実現を目指して施策を展開している。
  • 町や事業者からの負託にこたえられる地域内の組織(南三陸町観光協会)がある
    • 最適な制度を設計できるスタッフがいて、実践できる体制・ノウハウがある
    • 事業者からの信頼があり、サポートできるスタッフがいる
    • 莫大な件数の会計処理など事務手続きを実践できるスタッフがいる・・・元データはちいプラからCSVで取得
  • 地域OTAサイトがある
    • 安価に利用できる
    • ネットリテラシーが低い利用者でも扱いやすい・・・FAXやLINEによる通知、スマホ操作
    • 急激なアクセス増加にも迅速かつ低コストに対応できる

これらについては、制度設計や運用に携わったみなさまの生の声を交えながら別の記事でより深く考察したいと思います。

参考/自治体データ

都道府県宮城県
自治体名南三陸町
人口11,956人(2023年1月末時点)
地域OTA運営元一般社団法人 南三陸町観光協会
第3種旅行業者(宮城県知事登録第3-330号)
【連絡先】0226-47-2550
【Eメール】m-info★m-kankou.jp (★を@に変更してください)
運営サイト・南三陸観光ポータルサイト・・・南三陸町内の宿泊施設、アクティビティ、イベント、アクセス情報などを網羅した情報サイト
みなたび・・・宿泊、アクティビティのオンライン予約(ちいプラ利用) 2016年3月~
みなみな屋eマルシェ・・・ネット物販 2017年8月~(ちいプラと連動)

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