どちらが重要?(単年度1億円の助成金 vs 持続性のある年間500万円の自主財源)

はじめに

人口減・少子高齢化、科学技術力の低下、円安(日本売り)など日本の衰退がとまりません。その進行は都市圏から離れた地方(田舎)で顕著です。

このような状況で唯一といってよい「成長」が期待できる産業が観光産業であり、地域創生の切り札として位置づけられたのが「地域OTA」です。

観光庁が「地域OTA」構築への積極的な支援を表明 | ちいプラ | 地域OTA基盤

地域OTAの成否・進捗をはかる指標として「流通額」「予約件数」などに加えて「(運営法人の)成約手数料収入」があります。これはいいかえると「自主財源」です。これを単年度1億円の助成金・補助金と比較して、どういった違い・長所・短所があるのか考察してみました。

比較

以下で比較してみました。

助成金・補助金は、薬にも毒にもなります。施設改修やパソコン調達のようなモノ系の結果がすぐ出るものには適合しますが、「地域活性化」のように質的な変化(=ソフト系)が必要で中期的に粘り強く取り組む必要がある取り組みには向いていません。

書いていて思いましたが、助成金・補助金がもたらす弊害は、栄華を誇った大企業を倒産・身売りに至らしめる「大企業病」に通じるところがありますね。

比較観点自主財源助成金・補助金
調達できる金額立ち上げ時はゼロ
軌道にのると安定財源となる
金額が大きい。
持続性あるない(単年。せいぜい3年)
使途の制限使途自由申請に記載した用途に限定。
※試行錯誤・トライ&エラーできない
成果報告の対象事業主、地域住民行政、国
成果報告で求められるもの現実的で定量的な成果
費用対効果・見通し・前年比
体裁が整っていること
フワッとした情緒的な成果(例.メディア掲載)
日夜考えること成果を出すこと体裁をととのえること
メリット・使途自由であり試行錯誤できる
・変化にタイムリーに対応できる
・価値を生む業務に集中できる
資金がなくても着手できる
デメリット軌道にのせるまで持ち出し・負の遺産を残す(※1)
・価値を生まない仕事の大量発生(文書作成や体裁を整える)
・試行錯誤・トライ&エラーできない
必要とされる能力リーダーシップ
戦略・マーケティング力
チームビルディング力
事務処理能力
作文能力
カギとなる人ビジネスリーダ役人
向いているもの質的な課題解決施設改修・・・単発・高額・ハードウェア系
※箱モノを新設すると負の遺産になるので注意

(※1)負の遺産の例・・・過剰設備の維持管理費負担、助成金で構築した体制(人)を維持困難 → 退職 → 事業継続困難

最後に~国・自治体への提言

(手前味噌になるので説得力はないと思いますが)観光庁の方針(=地域活性化の切り札として観光産業。その手段の1つとして脱大手OTA/地域OTA)は正しいと思います。ただ、改善余地があります。それは、支援するフェーズです。

現在は、「地域OTAの設置」を支援しています。地域OTAの設置は単に「スタートラインに立った」だけです。大切なのはそこから実際に「走り続けてゴールに近づく」ことです。前者でなく後者に支援すべきです。

よく「寄付したら、その企業が同額を加算して寄付する」というフォーマットがありますが、それを真似てはどうでしょうか?地域OTAサイトの運営で100万円の手数料収入を得たら、100万円加算して助成する。のです。

そもそも本格的な地域OTA構築基盤を提供している弊社もTXJさんも初期費・固定費無料でシステム提供しています。成果にコミットしたいので「スタートラインに立つ・一歩を踏み出す」ことにお金をかからなくしているのです。それなのに国は助成金をつけているからおかしなことになるのです。(助成金目当ての自社サイト用予約システム提供者や地域創生コンサル他の中抜き業者による「なんちゃって地域OTAシステム」の乱立 → 成果ゼロ)

助成金・補助金は、諸刃の刃です。薬にも毒にもなります。国・自治体が期待しているのは「助成先地域が自走できるようになる」ことですが、現実には「依存症患者」を大量生産しているだけです。

個人のキャリアでも地方活性化も同じようなものです。苦労しながら試行錯誤を繰り返して獲得した経験・技術・信用が持続的な経済的価値をもたらす基盤となるのです。これこそが自走に必要な資質です。あぶく銭は身にならないどころか、身を滅ばすだけでしょう。

やり方をあらためる必要があります。