「地域OTAやってます」が「あたりまえ」になる日

観光庁による地域OTA導入設置義務付けの衝撃、その前と後

2023年3月に観光庁が登録DMOに対して、地域OTA(地域特化型の宿泊・アクティビティ等の情報発信・予約・決済システム)の設置を事実上義務付け(=27年度末までに100%という数値目標を設定)しました。

【参考記事】観光庁が「地域OTA」構築への積極的な支援を表明

これ以降、ちいプラへの引き合いが激増しました。

半年に1・2件だった問い合わせが、ある月は7件に達しました。ちいプラと連携することで地域様に総合的なサービスを提供したいベンダー様(CRM、データマーケティング、地域クーポン等)からの協業のお声かけも多いです。本格的な地域OTAサイトを構築できるのは、現状、弊社のちいプラと、TXJさんの2社しかありませんが、TXJさんの資料で”N社”として比較されているそうです。

どうやら業界では、ちいプラ、NYANGOは、そこそこ有名になっているようです。弊社が造語した「地域OTA」もかなり普及してきているのも喜ばしいところです。(地域OTAでWeb検索すると弊社が最上位に表示されるので)

弊社は広告・営業していない(=このオウンドメディアのみ)ので、先方がネット検索や口コミでコンタクトしてくれるのを待つだけなのですが、前述した背景もあり、ここ1年で30近くの地域・ベンダー様からお話を伺う機会がありました。

このように書くと「いいことづくめ・順風満帆でいいね!」と感じられるかもしれませんが、いいことばかりではありません。それは何かというと観光庁の地域OTA設置義務付けの前と後で、問い合わせてくる方の「質・意識・温度感」の違い(低下)です。

「前」に問い合わせてきた方々は例外なく、「現状に疑問を持ち、それを改善する打ち手としての地域OTAというアイデア」を持っている方々でした。

(疑問例)「じゃらんや楽天トラベルって使う必然性ってあるんだっけ?」
(仮説例)「ICT関連コストはかなり低下している。自前で予約サイトを運営したら、金・データが蓄積できて、それを再投資・利活用すれば、こういう効果が期待できるのでは?」

これは、弊社が提案していることと一致しているので、顔合わせで「まさにちいプラみたいなシステムを探していた!!」とおっしゃっていただき、意気投合することもしばしばでした。

ところが「後」に問い合わせてくる方々は、うってかわって「観光庁がやれといっているから(=助成金もらえるから)」「地域OTAを入れないと採択されないようだから」といった動機の方が多いです。話をしていて「響いていない」のが手に取るようにわかりました。(当方は、せっかちなので「失礼ですけど、そんなマインドでは絶対に成果だせませんよ。」と指摘することもしばしばです。)

【提言】観光庁施策を凝視するかわりにお客様や地域の事業者のビジネスを理解することに注力すべき。観光庁は立ち上げ期にカネを支給するのを避けるべき

上述したように「意識」の低い問い合わせが増えています。こういう方々に申し上げたいのは「観光庁じゃなくてお客様を見ろ!!現地に足を運んで事業者や住民の声に耳を傾けろ!」の一言です。言葉が強くてすいません💦

観光庁も「立ち上げ・導入・実証実験」にカネを出すのはやめるべきです。持続性のないあぶく銭で調達した仕組み・人材なんて維持できるはずがないのですから。立ち上げは難しくありません。難しいのは継続・収益化です。現状の仕組みで潤っているのは地域外のなんちゃらコンサルと何かやった気になっている地域の行政職員だけです。地元の民間事業者は総じてしらけてます。地域OTA導入を促したいのであれば、以下のようにしてはどうでしょうか?

  • 立ち上げ期の補助は一切やめる
  • 企業CSRでよくある、寄付額と同等を上乗せする方式を真似する
    • 稼げる仕組みを自立で構築したら、その成果に応じて報奨金を支給

地域OTAの現在の成熟度と今後の見立て

下の図は、昨年(2023年)、M&Aのオファーをいただいて、デューデリージェンスを受けた際に、弊社の現状・今後の見立てを説明するために作成したスライです。タイトルは「地域OTAの成長性、現在の成熟度に対する考察」です。

2016年から地域OTAに取り組んできた弊社からすると現状は「バブル」以外の何物でもありません。ハイプサイクルにあてはめて考えると「過度な期待期」です。

ちいプラやTXJさんのシステムを導入すれば「成功が約束」されているような考えの甘い方々が多いです。「助成金とれればOK。どうせ役所系のやることに”失敗はない”(あたかも成功したように作文される)から、責任を追及されることもない。導入後の成果?なにそれ、おいしいの?」な自称コンサルやWeb制作会社さんも目立ちます。

弊社のトップページでも強調していますが、地域OTAは「WordやExcel入れて業務効率化」みたいな陳腐な取り組みではありません。「地域活性化プロジェクト」です。ちいプラのようなシステムの活用は必須ですが、それはゴールではありません。単にスタートラインに立っただけです。弊社は、「勝ち筋」「アンチパターン」など有用な助言を提供できますが、その方法論を地域課題を踏まえて消化して、創意工夫・試行錯誤を重ねて(地道に汗をかく!)果実を得るのは他ならぬ地域のみなさまです。

残念ながら、そういった認識・覚悟が全く欠落している地域・コンサルからの引き合いが激増したまま高止まりしているのが現状です。

こういった現状を踏まえて、弊社は地域OTAが「あたりまえ」になるのはまだまだ先のことだと考えています。

状態時間説明
1黎明期2016年3月~宮城県南三陸町観光協会会長に就任した先見の明のある経営者の発案・委託をうけて開発に着手。「みなたび」としてローンチ。
無数の改良・機能強化を積み重ねる。
2019年 秘湯を守る会、2021年 Aeru、2022年 あまみシマ博覧会 で採用
2ビッグバン2023年3月観光庁が登録DMOに対して、地域OTAの設置を事実上義務付け(=27年度末までに100%という数値目標を設定)たことにより一気に認知度・導入機運が高まる。
【参考記事】観光庁が「地域OTA」構築への積極的な支援を表明
3過度な期待期現在「地域OTA」を入れると観光庁事業に応募できる状況が増えて、真剣に考えていない地域・ベンダーからの引き合いが急増
4幻滅期2026年~導入から1~3年経過。助成金・補助金目当てで導入した「なんちゃって地域OTAサイト」で全く成果が出ない(お金もデータも蓄積・循環しない)事例が頻出。行政がやることに「失敗はない」ので「そもそも地域OTAのコンセプトが悪い。無理ゲー」みたいに作文されて、責任転嫁される。批判的な記事がバズって一気に幻滅期に突入
5普及期2028年~ちいプラの成功事例や再現性ある勝ち筋が言語化されてバズる。各地域のゾンビ地域OTAのリプレイス需要が生まれる。本物の地域OTAが定着

地域OTAの成長性、現在の成熟度に対する考察

まとめ

ここ40年でICTインフラコストは劇的に低下しました(1億分の1以下)。これによって人口数万人レベルの地域でも、地域特化型の予約システムを導入することが経済的に可能になりました。またここ数年のAIのイノベーションにより「データ価値」が極めて高くなりました。

地域OTA(で経済循環率を高める&データ活用が生み出す好循環)は合理的なソリューションなので、水が高いところから低いところに流れるのと同じで、遅かれ早かれ「常識」になると思います。

ただ、現状は「過度な期待期」にあり、そのあと「幻滅期」に向かうと予想されます。機が熟したとき(=普及期)に「圧倒的な存在」として一気に面をとれるように、すでにある「成功事例」をさらに先行地域様と一緒になって積み上げていこうと思います。

頑張ろう!!

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