【永久保存版】自社サイト用予約エンジンを流用して地域OTA風サイトを構築する際に留意すべき点(システム選定用チェックリスト付き)
ちいプラ(地域旅行商品販売プラットフォーム)は、地域OTA(地域型OTA、地域版OTA、観光DX)を実現するためのワンストップソリューションです。オンラインでの宿泊予約とアクティビティ予約とその管理に必要な機能を網羅しています。地域の情報発信、予約、決済、データ利活用まで一気通貫にサポートします。
はじめに
2023年3月に観光庁が登録DMOに対して「地域OTA設置を(事実上)義務付ける」方針を発表して以来、2016年からこの方針にど真ん中のシステムを提供している、弊社「ちいプラ」への問い合わせが激増しました。それと並行して以下のような事象も頻繁に観察されるようになりました。
個別事業者向け予約システムのベンダーが、そのシステムを流用して「地域OTA」できます!という営業攻勢をしかけている
みなさん、観光庁の施策(というかお金の匂い)に敏感で凄いですね。苦笑
それらのITベンダーさんは、導入検討している地域様において、ちいプラの比較検討対象となるので、弊社の知るところとなります。これまで聞いたことがあるのは以下のベンダーさんです。
- JTB-BOKUN・・・記事「JTBーBOKUNとちいプラの比較」があるのでご参考にしてください
- 予約番
- 里山コネクト
- RCBooking
- Nutmeg(ナツメグ)
地域様にとって選択肢が増えるのは好ましいことですし、弊社もライバルがいたほうが張り合いがある(今のところ宿泊とアクティビティの両方を扱えるのはTXJさんとちいプラだけ)ので、基本的には歓迎なのですが「機能的にしょぼいなぁ。そもそも、それって地域活性化ではなく地域搾取促進では?」というシステムや提供条件が散見されるのも確かです。
(存在しないシステム~開発中~を積極営業しているところも複数あり、ある社のサービスは1年以上経過しても実体がないようですが、それって大丈夫なんですかね・・・。)
この記事では、個別事業者向けの予約システムを使って、地域OTA風サイトを実現しようした場合に、よくみられる問題点を列挙しました。記事の末尾にはチェックリストも用意しました。
各システムの比較検討の参考にしていただければ幸いです。
個別事業者向けの予約システムと地域OTA用予約システムの根本的な違い
個別事業者向けの予約システムを地域OTAに流用しようとするアプローチのシステムは少なくありません。実際、予約サイト上は、地域のコンテンツを集約して表示できるので、一見、地域OTAっぽく見えるのですが、実際にはいろいろと制限・制約が多いです。
この制限・制約の原因となっているのは「基本的な設計思想の違い」です。基本的な設計思想とは何か?というと、地域OTAの運営モデルである「地域OTAサイトを運営する法人(DMOや観光協会)とそのサイトに参画する多数の地域内事業者」という枠組みを想定しているかどうかです。
以下では、具体的に見ていきます。
単体事業者向けシステムの設計にない機能
単体事業者向けシステムは、事業者=予約サイト運営者です。ですので地域OTA用の「運営者向け機能」が設計上、考慮されておりません。また各事業者のデータを横断して取り扱うという必要がない(むしろ厳格に分離されている必要がある)ので「データを横断して扱う」という設計・考慮もありません。
データを横断的に扱うために、地域でグルーピングしようとすると、システムの根幹をなすデータベースの設計を変更して、その変更を無数の処理に反映させる必要があります。修正漏れ・ミスがあると情報漏洩事故(=他事業者の情報にアクセスできてしまう)に直結するので100%の正確さが求められます。
単純な作業ですが、膨大な改修作業・テスト作業が必要となります。この改修工数とリスクを嫌って多くのシステムではAPIを使って個別事業者の情報を集約して、サイト上で表示することを選択しますが、こうなると「遅い」「柔軟性がない」という問題が発生します。
「柔軟性がない」とは「地域独自のカスタマイズが困難」という意味です。例を挙げると、例えばあるシステムが標準で用意する「検索フォーム」では、「国」「地域」という項目が必ず表示されてしまいます。海がない地域なのに「海が見える」といった条件が表示されたりします。(ちいプラでは地域独自のカテゴリ・タグを自由に追加して検索フォームに表示できます)
その他には、システムの導入にあたってはベンダーと個別事業者の間で猥雑や契約手続きが必要であったり、高額な初期費が必要であったり、契約期間に縛りがあったりといった制約もあります。
実際にある怖い話
(その1)あるシステムは、自社サイト用予約システムとして著名なシステムです。このシステムを流用した地域OTA風システムで、データを集約するのは大変です。運営法人が各事業者の予約データ(顧客情報を含む)を取得するには「各事業者用のアカウントで各事業者用の管理画面にログインして、データーを取得」する必要があるそうです。事業者が少なくても大変な手間がかります。とても50事業者、100事業者を扱うことはできません。
(その2)あるシステムは、世界的に使われているシステムです。標準で用意されている検索機能は、「国」「地域」という条件が必ず表示されてしまうので実用に耐えません。OTAとして当たり前の「利用日」で検索する機能もありません。さらに地域独自の魅力を訴求するための独自のカテゴリ条件を追加することもできません。またサーバーが海外にあるため、表示はもちろん、検索も遅いです。
(その3)あるシステムは、まだ開発途上ですが各地に営業攻勢をかけています。独立系ベンダーですがこの業界の有力メディアに広告出稿していますし、かなり資金力あるようです。(【参考】ちいプラは広告費ゼロです。オウンドメディアと口コミだけで多くの引き合いをいただいています。これが安価に提供できる理由の1つです)
経済条件としては、コンサルティングフィー込みで年間200万円~で提案しているとのことです。ある地域の方(=体験プログラムを20年来提供している事業者でもある)は「(成果保証されるわけでもない)都会のコンサルなんていらない」とにべもありません。このシステムを試験導入している方(=ある地域ですでに地域OTAを数年実践)によると「パッと見のデザインは綺麗で、操作もシンプルで、(有名どころで実績をつくろうとしているからだと思うが)サポートも手厚い。ただ、こだわりはじめると使えない。」ということです。また現行はアクティビティのみで宿泊は扱えません。その他の事業者よりはシステムとして洗練されている印象はあるので、今後、どのように進化していくのか注目しています。
地域OTA向けシステムの特徴
地域OTA向けに設計されたシステムには上述したような問題はありません。個別事業者向けデータの境界が厳格であると同時に、データを横断して取り扱うための設計が最初から含まれているので、高速かつ柔軟です。運営者に必要な多岐にわたる機能も実装されています。
地域OTA向けに設定されたシステムは、弊社の知るところ(=多くの地域様が収集した情報も含めて)では、ちいプラとTXJさんしかありません。
余談/ちいプラとTXJさんの違い(脱大手OTAと親大手OTA)
上述したとおり、地域OTA向けに設計されているシステムは、ちいプラとTXJさんしかありません。「旅」の二大コンテンツである宿泊・アクティビティを同一サイト上で扱えるのもこの2社だけです。実際、必ずといってよいほど比較検討されています。問い合わせてきた地域様が「TXJ」さんを知らない場合は、「(後悔しないように)しっかりと比較検討してくださいね」とお伝えしています。ちなみにTXJさんの説明資料では、弊社はB社として紹介されているようです。笑
では、ちいプラとTXJは同じか?というと実は違いがあります。これは上述したような「システムの基本設計」の違いではありません。そもそもの目的の違いです。どのような「地域課題を解決するためのシステムなのか?」という「思想」の違いです。
ちいプラの目的は、地域経済循環率向上による地域活性化
ちいプラの目的は「地域外に(無駄に)流出しているカネ・データを地域内で再投資・蓄積・利活用することで好循環(※)を確立して地域活性化を実現する」ことです。この「地域外に流出しているカネ・データ」の行先は大手OTAです。この流れを変えるということは「脱大手OTA」を意味します。(大手OTA~じゃらんさんとか楽天トラベルさん~には恨みはありませんし、これからもビジネスホテルのように「利便性と価格第一。寝れればOKでそれ以外は求めない」というような宿泊では利用させていただきます)
もちろん地域で調達できなければ、地域外から調達するしかありませんし、不得手なことは外部調達して、得意なことに集中的に投資するのは理にかなった意思決定・行動ですが、大手OTAへの手数料支出はそのような「合理性」はなくなりつつあるのが現状です。(【参考】大手OTA(国内)の集客力は今も健在?不都合な真実)
なお「好循環」とは、①自主財源(=長期投資できる持続的な資金源)の確保→②地域内専門人材(マーケター、デザイナー、ライター)への発注・育成→③地域ブランドイメージ向上(知名度や好感度)→④定住移住促進&集客力向上&高付加価値化といった一連の流れをさします。
TXJシステムの目的は、海外向けマーケティング・PR促進とデータの可視化/親海外OTA・メディア
一方で、TXJさんは、こちらのプレスリリースにあるように「マーケティングデータの可視化」が目的です。売りとしているのはグローバルなOTAや旅行メディアとの連動です。つまり「親・海外大手OTA」です。「データ集約・利活用」の考え方はありますが「流出している資金の流れを変えよう」という思想はありません。
TXJさんのシステムも地域OTAサイト上で予約する機能を備えているようですが実績は芳しくないようです。ちいプラのように年間で億円単位の流通があるサイトはなさそうです。ググって出てくる採用地域もほとんどが利用を終了していますし、出店事業者がほぼゼロの地域も多いです。
また、弊社と異なり国内にシステムエンジニアはいないようです。ちいプラを選択もしくはTXJさんから乗り換えしてくださった地域様は一様に「TXJシステムは使い勝手が悪い」とおっしゃいますが、このあたりの基本的な思想の違いや体制が影響しているのかな?と思います。
TXJシステムに適合する地域は?→インバウンド全振り
弊社の見解ですが、システムの特性を考慮すると、TXJさんシステムに適合する地域は「インバウンド(英語圏)に全振り。日本人客は不要。したがって国内OTAも不要」という地域様かなと思います。日本向けに販売するためにはシステムのカスタマイズが必要となりそうですが、なかなか厳しい(TXJさんの求人からうかがえる報酬相場では優秀なシステム・エンジニアを雇用するのは不可能)のではないかと思います。
まとめ
ちいプラと他社の地域OTA風システムを比較した場合、他にも機能面では細かな差がいくつもありますが、それはちいプラが2016年から実稼働の中で機能強化改良を重ねてきたので当然といえば当然です。(【参考】ちいプラの機能改良履歴)このような細かい差異は、時間が解決していくと思われます。
ですが、上述したような「設計の違いに起因する課題」は、解決が困難です。
地域OTAを導入を検討している地域様におかれましては、上述したような設計の差異がもたらす、機能や性能の制限・制約について理解いただいた上で、各システムの比較検討を実施して、自地域のニーズにあった製品を選定するようにしていただくことが肝要です。
比較検討の結果として「地域OTAとして設計されたシステムを使いたい」と判断した場合、現時点の選択肢(2024年8月)は「ちいプラ」と「TXJさん」だけとなります。その場合の比較観点として「基本的な思想の違い」「システムが解決したい課題の違い」についても触れました。
この記事が参考になりましたら幸いです。
付録
地域OTAシステム導入時のチェックポイント
一連の内容を踏まえてチェックリストを作成してみました。地域OTAを導入する際は、予約機能だけでなく、運営者用の機能も確認してください。
また当該システムの目的(どのような地域課題の解決を指向しているのか?)、利用条件、機能以外(性能、地域向けカスタマイズ)も精査することが必要です。
もちろん、各システムの評価以前に、自地域の導入目的(=解決したい課題は何か?)が明確になっていることが重要なのはいうまでもありません。
システムの目的/どのような課題の解決を目的としたシステムなのか?
- お客様の利便性向上?
- 運営法人の業務効率の向上?
- 参画事業者の業務効率・業務品質の向上?
- データ蓄積・利活用→マーケティング高度化→高付加価値化?
- 地域経済循環率の向上?
- 持続的な自主財源の確立
- 地域内調達率の向上
- 脱大手OTA?
- 地域ブランドイメージの向上?
契約・経済条件
- システムの構築費用は?
- 月額固定費は?
- 決済手数料は?下限や上限の有無は?
- クレカ関連費用(初期費、月額固定費、決済手数料)
- FAX関連費用(初期費、月額固定費、決済手数料)・・・一部の宿泊施設ではまだ利用されています
- 最低利用期間は?
- ITベンダーとの契約主体は?(運営法人以外に個別事業者との契約も必要)
サポート
- サポートの内容と対応レベル
- 標準サポートとプレミアムサポートの内容・価格
- カスタマイズ対応の可否、料金
予約サイト機能
- 検索機能
- どのような種類の検索が可能か?
- 利用日や利用人数による条件検索
- 地図検索
- キーワード検索
- こだわり検索
- 事業者数が増えても検索は高速か?(通常1秒以内)
- 地域独自の検索条件を追加できるか?
- 検索条件の変更が可能か?
- ブックマーク機能・閲覧履歴機能はあるか?
- どのような種類の検索が可能か?
- 販売できるプランについて
- 宿泊プランを販売できるか?
- 体験プランを販売できるか?
- キャンプ場プランを販売できるか?・・・特殊です
- 即時予約だけでなく問い合わせ予約にも対応しているか?
- プランのオプションに対応しているか?(保険加入要否、料理アップグレード、電源利用要否)
- 会員・マイページ機能
- メール認証が必須の会員登録機能があるか?
- 会員自身で予約詳細を確認したりキャンセル操作ができるか?
- 予約に紐づいた問い合わせが簡単にできるか?
- 口コミ機能はあるか?
- ポイント機能はあるか?
- フォトギャラリー機能はあるか?
- 地図機能はあるか?
- 任意の情報ページを作成できるか?
- カスタマイズ
- 全体のテーマ(色合いやフォント)をカスタマイズできるか?
- TOPページの表示内容をカスマイズできるか?
- 機能の有効無効をカスタマイズできる?
- 問い合わせ機能
- 問い合わせ機能があるか?
- 宛先(管理者向け、事業者向け)を指定できるか?
- やりとりが簡単か?(ログインしないでもやりとりできるか?スマホでも簡単にやりとりできるか?)
- 通知をメールやLINEで受信できるか?
- 対応漏れ督促機能があるか?
- ロボット対策がしてあるか?
- 口コミ機能
- 口コミ機能に対応しているか?
- 画像を投稿できるか?
- よい口コミを使った販促機能があるか?
- 口コミを促進する機能があるか?(ポイント付与やサンクスメール)
- 通知機能
- 予約受付・取消、問い合わせ、口コミ投稿
- 利用直前のリマインドメール配信に対応しているか?
- 利用後のサンクスメール配信に対応しているか?
- 通知をFAXでも受信できるか?
- 通知をLINEでも受信できるか?(運用業務を簡素化・迅速化するのに非常に役立ちます)
- SEO系機能
- サイトマップ機能(sitemap.xml)はあるか?
- OGP機能はあるか?
- SEO機能はあるか?
- GTMやGA4を設置できるか?
- 多言語対応
- 対応しているか?
- 対応言語は何か?追加できるか?追加時の費用は?納期は?
- 各言語は独自のページURLを持つか?(SEO対策に必須)
- 自動翻訳に対応しているか?翻訳後の内容を手動で更新できるか?
- 辞書を利用できるか?(地名や事業者名など固有名詞に必須)
- クレカ決済機能
- クレジットカード決済に対応しているか?対応しているカードブランドは?
- 初期費・固定費は必要か?
- 決済手数料率は?
- 入金頻度は?
- キャンセル時に自動的にキャンセルフィーを請求できるか?
- カード情報非保持・非通過に対応しているか?
- 3Dセキュアに対応しているか?
データ利活用
- データエクスポート
- データをエクスポートできるか?
- エクスポートできるデータの内容は?
- エクスポートするデータの内容(項目、並び)を任意に指定できるか?
- APIによるデータ連携が可能か?
- システム内でデータ分析できるか?どのような分析が可能か?
- GTM(Google Tag Manager)やGA(Google Analytics)、Search Consoleと簡単に接続できるか?
- どのようなコンバージョンが取得できるか?
管理サイト機能
- アクセス権限の考え方はあるか?サイト管理者、事業者、コンテンツ作成者、オペレーター等
- 事業者用のアカウントは、当該事業者用の情報(予約、プラン、在庫等)しかアクセスできなくなっているか?
- 運営法人用のアカウントはすべての事業者の情報を横断して簡単かつ高速にアクセスできるか?
- すべての事業者の操作履歴を簡単に閲覧できるか?
- すべての問い合わせに簡単にアクセスできるか?
- 月次請求・清算用の文書(請求書・清算書)を生成できるか?
- データを簡単にエクスポートできるか?
- 事業者自身が管理サイトにログインして販売・予約処理を行えるか?
運用機能
- 事業者の対応漏れのチェック機能・督促機能があるか?
- スマホだけでも大半の運用が可能か?(在庫管理、問い合わせ対応、予約内容確認等)
- 事業者から管理者への問い合わせ機能があるか?
- 管理者から事業者への一斉通知機能があるか?
サイトコントローラー機能(宿泊プラン販売)
- 他のOTA販売時に在庫や予約情報を一元管理する機能があるか?
- サイトコントローラーとの連携機能があるか?
- 連携・一元管理できるデータは何か?(在庫、予約、プラン・料金)
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